89歳の追分

江差追分セミナーに参加したのは2017年2月のこと
何度聞いても何度歌っても飽きない魅力にそれ以来ハマっています

母はこの江差からほど近い厚沢部町(あっさぶちょう)館(たて)の出身で、厚沢部からは江差追分の名手が多数生まれているとのこと
第23会全国大会優勝の木村正二さんは実に母の従兄にあたります
http://esashi-oiwake.com/national-conference/prizewinner/general/i23_chanp

わたしがセミナーに参加した際も師匠や地元の方から、「まさじさんは高音が見事でね」と声をかけたいただきました

先日「札幌文化芸術劇場 hitaru」のこけら落とし公演で江差追分が上演されました
師匠方、歴代優勝者、総勢100名を超す出演陣
今年89歳になる正二おじさんの名前もあり、会場に駆け付けました

江差追分って本当に不思

江差追分って本当に不思議
同じ節まわしを何度聞いても飽きない
人それぞれ味があり、感心するばかり

終盤になりアナウンサーの方が正二おじさんを呼び込みます
「御年89歳。今も現役で江差追分を歌っていらっしゃいます。第23会全国大会優勝、木村正二さんです。どうぞ拍手でお迎えください」

思わず隣のおばちゃんに言いました
「わたしのおじさんにあたる人なんです!」

力強く良く通る声、地元出身者ならではの方言訛り
「よく声が出てる!」
おばちゃんも感心しっぱなし

一番高音となる五節、見事に歌い切ります
すると左手の方から拍手が聞こえ、会場全体を巻き込み大喝采が湧き起こりました
江差追分の途中で拍手なんてこともあるんだ!と感動
隣のおばちゃんも「すごい!立派!」と感心しっぱなし
圧巻の追分
「すごい!89歳でこんなに歌えるのかい!涙がでた!」
わたしも涙がでました

感動のコメントを事務局の方にお伝えしたところ
「地元でのリハは上手くいかず…心配してたんだけど本番は誰よりも輝いていて、スタッフも他の出演者もリスペクトしなおしていました」とのこと

本番のアドレナリンのなせる技
生粋の歌い手魂
あの日昼の部夜の部あわせて4,600名の観客を一気にもっていったおじさん
すごいです
こちらの記事におじさんの雄姿が見られます)

さて、この日の大トリは現役漁師の菊地師匠でした
セミナーの打ち上げで日本酒を飲みながら参加者全員が順番に追分を歌っていったとき、はじめて菊地師匠の唄を聴いて鳥肌がたったし、心の底からかっこいいと思いました

いずまいを正し前のめりになるわたし
なのにー
直前の演歌の方の盛り上がりが尾をひいて会場には緊張感がないし、わたしの席のまわりも隣のおばちゃんも私語を慎まない
マスクをした男性が独り言のように低音でぶつぶつ言い続け、わたしは思わず
「シーーー!!話さないで!」と口パクで伝えました
あまりの剣幕にその島の観客はぴたっと黙ってくれて、おかげで菊地師匠の前唄・本唄・後唄を大満喫できました

謡い終わりにおばちゃん
「この人はうまいわ~」

そりゃそうさ!
江差追分会館のビデオの人だよ!
現役漁師だっちゅうの!
ホンモノ中のホンモノなんだよ!
いや~シビれまし

ノラ・ジョーンズが、かのラヴィ・シャンカルの娘と知った時、何とも言えぬ無力感を感じましたが、(分かってもらえます?この心のシステム。。。)
逆に自分が人から
「なるほど、そういうお母さまだったのね~」とか
「なるほど、子供のころからそうだったのね~」とか
自分で切り開いて独学でがんばってきたことを、環境が整っていたかのように勝手に理屈付け、納得のされ方をすると「?!」となります
勝手なものですよね
でも
「江差追分の名手木村正二の血を引く、なるほどね~」
これは言われたい!

勝手なものです

まさじおじさん
尊敬しています