All The Pretty Little Horses
― All The Pretty Little Horses ―

中学卒業と同時に結婚するまで資生堂美容部員であった母の夢は
世界一周豪華客船の美容室に勤務すること
まるでサリンジャーのナイン・ストーリーズの『テディ』の世界ではないか
そんなハイカラな美容部員時代に母はこの歌を同僚から教わった

ハッシャバーイ ドーンチュクラーイ ゴートゥースリープ リル ベーイビー

カタカナ英語のこのララバイを3人の子供たちは頻繁にせがんだ
「おかあさんハッシャバイうたって」
ここだけ切り取るとかのグラースサーガに登場しそうな心温まる逸話ではないか

記念すべきファーストアルバムのタイトル曲に冠したこの想いを
照れているのか欲張りなのか、母から感謝されたことはないが
間違いなく母への最大のオマージュである
   




― 収束性ドット世界 ―

草間彌生さんが語っている映像を展覧会で見たことがある
そう、このドットは草間彌生さんの作品にみられる「水玉」のことである

体という体、物体という物体を水玉で埋め尽くして自己を消滅させてしまう
そのようなことを語られていたと強烈に記憶している

個体は液体からなり、液体は気体からなり、気体はエネルギーからなるとすれば
物体を無限の粒子に還元させていくようなこの行為は
宇宙の謎を解き明かす鍵のようであり
個を全体から引き離す原罪意識を手放すこと、すなわち赦しの行為であるように感じられた

オレンジのおしゃべりはオカメインコのくーちゃんである
麦畑を落ちていく感触は大きな手がキャッチしてくれることを信じ切っている感触である

まだ見ぬ世界、まだ見ぬ明日は
我々が描く時間軸の概念のように一直線に連なっていくイメージではなく
草間彌生さんの水玉のように同時多発的にループするように発生してほしい

宇宙そして赦しの謎を解き明かし
永続的なつながりを得たい
この願望的妄想は幾度となく私の表現行為の中で繰り返される




― 午後零時の珈琲店 ―

大阪堂島ムジカ・ティー
たくさんのレコードと紅茶缶と写真と人で埋め尽くされたあの空間は
不思議といつでも「静寂」を帯びていた
人がいるけれど誰もいない
ざわついているけれど音のない
深夜0時 正午 ちがう午後零時
存在しない時刻
存在しない空間
割れたティーポットに手を伸ばせばあなたの手は傷つく
誰による言葉か分かりますか?
永遠に揺るがないような幸福感を感じる瞬間
私の場合それは
雑音と雑踏の中で切り取られた一瞬の映像のごとく
何の意味も持たないけれど照らし出されたような
何気ない瞬間

   


satoko

  

  
 
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